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日本語会話力を上達させる日本語研修方法を3点紹介!
2023年7月12日 公開
採用した外国人従業員が日本語能力試験(JLPT)のN1やN2を持っているのに、意外と日本語がうまく話せなかったり、取引先相手の日本人と会話のキャッチボールがスムーズにいかないといった悩みのお問い合わせを多くいただくことがあります。
これは日本語能力試験(JLPT)が「聞く」「読む」能力の試験であり、話す能力は問われないためです。英語のTOEIC試験で800点以上取っていても、英語を上手に話せない日本人が多いのと同じです。会話力はどんどん話して伸ばすしかありませんが、話すことに自信がない方は、職場ではミスを恐れてどんどん話さなくなるという悪循環になりがちです。
日本語研修の内容についても徹底した会話重視のレッスンをすることは当然必要ですが、やみくもにフリートークのみをひたすらおこなうのは学習効果も薄いため日本語会話力がしっかりと身に付くレッスンをする必要があります。
今回の記事では仕事で使える日本語会話力を上達に役に立つ日本語研修方法を3つ紹介していきます。ぜひ少しでもご参考になれば幸いです。
シャードイング
日本で生活している外国人は、必ずしも常に日本人とコミュニケーションがとれる状況ではありません。そのため、自分自身で主体的にスピーキングの練習に取り組むことが重要です。個人でもできるスピーキングのトレーニング方法として、まずシャドーイングがおすすめです。シャドーイングとは、日本語の音声を聞いた後にそれを真似して復唱する練習です。シャドーイングは、特にイントネーションや発音の向上に効果があります。また、リスニング力の向上や語彙の増加にも役立ちます。
具体的なやり方は以下です。
- 1. テキストを見ずに、音声を聞いた直後にほぼ同時に発声してみます。遅れは最大でも0.2秒程度で、なるべく早く反応するように心がけましょう。発声する際は、音声データとなるべく同じ発音やイントネーションになるように意識します。初めは難しい場合は、文ごとに一時停止して練習することもできます。
- わからない言葉があれば、テキストを使って確認します。意味や発音が分からない単語があった場合は、テキストを参照して正しい情報を得ましょう。
- 同じ音声データを3回から5回くり返して練習します。繰り返すことで、より正確な発音やイントネーションを身につけることができます。
シャドーイングのためには、日本語の教科書や映画、ドラマ、日本語のニュースなど、さまざまな音声を活用することができます。特に映画やドラマは、日本人の実際の話し方に近いので、自分が好きな作品を選んで練習することをおすすめします。また、YouTubeには無料でシャドーイング用の音声がアップロードされているため、手軽に挑戦することができます。
日本語の質問リストの質問に答える
シャドーイングを行うことで、日本人らしい話し方やイントネーションを身につけることができますが、ただ真似をするだけでは、自分で文章を組み立てる能力を養うことは期待できません。状況に応じて柔軟に日本語を話すためには、日本語の質問リストを使って自分で答えを考え、声に出して発音する練習がおすすめです。これによって、自分の言いたいことを自由に表現するスキルを向上させることができます。
具体的な方法は以下の通りです。
- 質問リストから自分が選んだ質問を声に出して話し、自分の答えを録音します。事前の準備は行わず、その場で日本語で考えて表現することが重要です。
- 上手に答えられない場合、2つの可能性が考えられます。①自分の母国語で表現はできるが、日本語では上手く表現できない場合、または②どちらの言語でも上手く表現できない場合です。これらの課題を解決するために、①の場合は日本語の表現を調べ、②の場合は自己分析を行う方法を取りましょう。
- 自分の答えの録音を確認し、不自然に感じる言い回しや発音の問題点をメモします。もし協力できる友人や日本語の先生がいる場合は、録音の間違いを指摘してもらうと良いでしょう。
- 1から3のステップを繰り返し、自分の答えを改善していきます。徐々に自信を持ってスムーズに日本語で話せるようになるでしょう。
日本語で話す機会をたくさんつくる
一人でのスピーキング練習はスピーキングの基礎を築くことができますが、より自然なスピーキング力を伸ばすためには、話し相手を見つけて実践を通じて学ぶことも重要です。特に色々な相手と日本語をすることの経験を積む事で人に合わせた日本語コミュニケーション力を鍛える事ができるので会話のキャッチボールが上手くなります。
まず、日本人の同僚との食事会や飲み会に積極的に参加し、日本語での雑談の機会を増やしましょう。日本の飲み会は食事をしながらおしゃべりする場なので、お酒が飲めなくても気軽に参加できます。飲み会では、仕事中に話すことのできないトピックについて話す機会が得られるだけでなく、部署をまたいで他の同僚とコミュニケーションを取る良い機会にもなります。飲み会で上手く話せなくても仕事に影響はありませんし、むしろ日本語を教えてもらえる場として考え、会話の数を増やすことを心掛けましょう。
また、会議や打ち合わせなどの場で積極的に発言することもおすすめです。特に、会議の進行役であるファシリテーターの役割を担うことが良いです。ファシリテーターは、使用する言葉が定型的であり、質問する内容を事前に考えることができます。会議に応じて臨機応変に対応する必要もあり、スピーキングの練習になります。自信がない場合は、顧客先で発言する前に、まず社内の会議で実践することから始めましょう。
日本で新しく働き始めた人にとって、仕事で日本語でプレゼンテーション(発表)をする機会はあまり多くありません。そのため、もしプレゼンテーションのチャンスがあれば、しっかりと事前準備をし、本番前に一度同僚にプレゼンテーションを聞いてもらい、フィードバックを得ることが大切です。また、プレゼンテーションが終わった後に参加者からのフィードバックを受けることもおすすめです。これによって、プレゼンテーションの機会を活用し、スキルを向上させることができます。
現在の日本語会話力を知り、目標を設定することが日本語会話力アップのポイントです
どのような学習方法、教材を使えば効果的に会話力が向上するのか?と、迷うことも多いと思いますが、そのためにはまず最初に、現在の日本語会話レベルと目標とする会話レベルを明確に設定することが重要です。そして、適切な学習プラン、教材を使って学習することが、会話力アップのためのポイントになります。しかし、現在の会話レベルを正確に把握したり、目標とする会話レベルの設定を具体的にすることは困難な場合もありますので、以下にて目標やレベル設定の際に参考にできる日本語会話力の指標をご紹介します。
10段階会話レベル評価(独自)
JLPT(日本語能力試験)では、会話力は測定できませんので、当スクールが過去1,000名程度の受講生のレベルをベースに、会話力に特化した10段階評価のレベルを設定しました。独自基準として、受講生の現状の会話力レベルチェック、目標設定、受講生がどの程度レベルアップをしたか客観的に数値評価をするために活用可能です。現在の日本語レベルの把握や、どのレベルを目指せばいいのか?という点において、ご参考にいただけると思います。
私たちは、OPIレベル基準※をもとに、10段階で会話力を評価します。
※OPI(oral proficiensy interview)とは、口頭運用能力を計測するために開発された、1対1のインタビュー形式の試験で、会話力を10段階に分けて評価します。
1,000名以上の受講生実績データをもとにした、
会話レベルとビジネス現場でできることについて
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JLPTレベル |
会話レベル |
ビジネス現場でできること |
初級 |
N5レベル相当 |
1 |
「こんにちは」「私は○○人です」「名前は○○です」などいくつかの決まったフレーズを使うことができる。 |
2 |
「仕事は~時からです」「仕事は~曜日です」など、日課について簡単に言うことができる。 |
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3 |
「休みはいつですか」「日曜日です」など、日常的なことについては、短い受け答えができる。 |
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中級 |
N4~N3レベル相当 |
4 |
聞き返しは多いが、日本人社員がゆっくり話してあげれば、なんとかコミュニケーションは成立するレベル。 |
5 |
日本人社員がゆっくり話せば、コミュニケーションは成立するレベル。会議中の会話内容の理解度は30~40%程度。 |
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6 |
社内での日本人社員との会話は比較的スムーズにできるレベル。会議中の会話内容の理解度は60%~70%程度。 |
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上級 |
N2~N1レベル相当 |
7 |
社内での日本人社員との会話は問題なくスムーズにできるレベル。会議中の会話内容の理解度は80%~。 |
8 |
たいていの場合において言葉に詰まることなく、わかりやすく説明することができる。社会的、専門的な話題にもついていける。敬語も十分に使えるので、顧客とのやり取りを1人で任せられるレベル。 |
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超級 |
かなりネイティブに近い~ |
9 |
かなりネイティブに近いですが、ことわざなど独特な言い回しは理解はできても使うことは難しい場合がある。 |
10 |
ビジネス経験のある日本人と比べても遜色が無い。 |
(※1000名のデータに基づく)
次に当スクールでレッスンを行なっている生徒さんの実際の会話レベルの動画について紹介します。御社の場合は、どのレベルを目指せばいいか実際の音声を聞きながらご参考にしてみてください。
会話レベル4、建設現場の技術者(ベトナム人)の場合
様々な質問に文単位で話すことや質問に答えることができます。しかし詳しく答えようとしても限られた身近な話題以外は、話を完結させることができずに途中で切れてしまいます。また発音では母語の影響が出ています。
会話レベル6、ITシステム開発の技術者(中国人)の場合
質問に対して様々な状況を理解して、具体的な例を挙げながら分かりやすく答えることができます。全体的にまとまりのある文章を話しますが、内容が複雑になったり、文章を長くしたりすると流暢さが落ちてしまいます。
会話レベル8、ITシステム開発の技術者(中国人)の場合
自分の考えやトピックの背景を詳細に話し、一歩進んだ発想で話を進めることができ、発話量も安定しています。上級レベルの内容を話したり表現を使ったりすることができています。
日本語会話力を上達させるためには学習時間とアウトプット量の確保が重要です
日本語力の上達は、「学習時間」と「インプットとアウトプット」のサイクルをどのくらい回せるかにかかっています。どのくらいの学習をすれば、どのくらい会話力が成長するのか?は非常に気になるテーマです。もちろん国籍、母国語の影響、職場環境といった個人差要因による違いはありますが、おおよその平均値データもございます。
学習時間と日本語レベル向上の関係については、こちらのコラムをご参考ください。研修・自学を通して、業務に直結した内容を学び現場で「書く・話す」機会を増やすことで、学びを体得できます。
つまり外国人社員の日本語力を短期間で向上させるには、「現場に近い研修内容」と「現場でのアウトプット機会」が重要となってきます。研修会社を選ぶときには、「実践的なカリキュラムか」を確認して選ぶとよいでしょう。
また企業様で日本語アウトプット機会を用意してあげると研修との相乗効果がでるので、学習スピードが向上します。
下記ページでは、実際の研修事例をもとに、教材選定、レベルチェックと目標設定、学習プラン、受講後の成果についてご紹介しておりますので、ご参考ください。
外国人社員向けの日本語研修を効果的に進める目標設定のポイント 製造業事例と学習プランのご紹介
会話レベルは学習者が持つレベルと企業様が求める目標レベルを元に期間などを算出するのですが、企業側としてはあらかじめ期間や習熟度などの効果が明確である方が理解がしやすいでしょう。
外国人従業員がいる多くの企業では外国人社員にも即戦力として働いて欲しいと考えるため、日本語学習は費用対効果を考慮し力を入れて取り組みたい分野でもあるでしょう。
ここでは実際の教育事例や外国人社員採用についてお役立ちコラムを定期的に配信します。
まとめ
日本語スピーキング能力を向上させるためには、発音だけでなく、イントネーション、流暢さ、文法など、さまざまな側面にアプローチする必要があります。また、仕事やプライベート、上下関係に応じて話し方も異なる場合もあります。ネイティブのような発音やイントネーションを身につけるには、長期的なトレーニングが必要です。そのため、まず正しい文法の使い方や流暢さの向上といった、上達しやすい側面に取り組むことで、成果を実感しやすく、モチベーションも高まるでしょう。今回紹介した練習方法を活用して、日本語力の向上を目指しましょう。