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外国人社員向けの日本語研修を効果的に進める目標設定のポイント 製造業事例と学習プランのご紹介

2023年6月26日 公開

企業の日本語研修を効果的に進めるためには、受講者一人ひとりに明確な目標を設定することが重要です。この目標を段階的に達成していくことで、受講者のモチベーションを維持し、会社の期待値に沿った成果を得ることができます。以下では、そのための手法と、当スクールにて受講されている企業様からお問い合わせいただいた際の実際の課題感や目標設定について一例としてご紹介します。

目標レベルは、どう設定したらよい?

日本語研修を実りあるものにするために、まず明確にしたいのが「目標」です。現状の日本語力を把握した上で、伸ばしたい力は何か、研修後、どの程度のレベルに到達したいのかなどを具体的に設定しましょう。

①具体的にどの日本語能力を伸ばしたいのかを明確に定める

「日本語能力」と一括りに言っても、会話能力なのかメールを書く能力なのか、その内容は多岐にわたります。まずはどの能力を伸ばしたいのかを明確にする必要があります。 言語能力を考える場合、大まかには「話す」「聞く」「読む」「書く」という四つのスキルに分けて考えると整理しやすいでしょう。最終的には四つのスキルをバランスよく伸ばすことが理想ですが、まずは業務に必要なスキルや優先順位を考慮して目標を設定すると、具体的な目標が立てやすくなります。

②受講者の出身国籍から日本語の習得における特性を把握する

受講者の特性を把握する際に最も重要な要素は、漢字圏の出身か非漢字圏の出身かということです。漢字圏の出身である中国、台湾などの場合、漢字の学習のハードルは比較的低く、「読む」「書く」の学習が非漢字圏に比べて早く進む傾向があります。ただし、文字を見て理解できてしまう分、「話す」「聞く」に苦手意識を持つ受講者も少なくありません。そのため、読み書きを中心に評価をする日本語能力試験JLPTでは、N2やN1レベルに容易に合格できますが、実際の会話力との間には乖離が発生しているのが実情です。

一方、ベトナムをはじめとする上記以外の非漢字圏の出身者にとっては漢字の学習は負担が大きく、習得には相当な時間を要することを理解しておく必要があります。このような受講者に対しては到達目標や必要な学習時間を設定することが特に重要です。

上記のような出身国における、読み書き能力(日本語能力試験JLPT)と、実際の会話力には、大きな乖離があります。当スクールでの受講が多い中国籍とベトナム籍を比較した際のJLPTレベルと実際の会話力の乖離については、(全員が全員ではもちろんありませんが、おおよその目安とお考えください)

  • 中国籍のJLPT N 2合格者は、ベトナム籍のN 3~N 4合格者の会話力に近しいもしくは等しい
  • 中国籍のN1合格者は、ベトナム籍のN 2~N3合格者の会話力に近しいもしくは等しい

以上のように、受講者の特性に応じて、目標や学習計画を調整することがポイントとなります。漢字圏出身者と非漢字圏出身者の違いを理解し、個別のニーズに対応することで、より効果的な日本語研修が可能となります。

③受講社員それぞれの現場、担当業務で求められる日本語力を把握する

3番目のポイントは、実際の現場、職種、担当業務において、求められる日本語の種類とレベルを正確に把握することです。現場で使用されている語彙を収集・調査したり、現場の同僚・先輩・マネージャーにあたる日本人社員にインタビューを行ったりすることで、現実の言語使用状況を把握し、目標設定に役立てることができます。これにより、研修の効果も明確になります。また、目標を設定する際に、最初から遠い未来のゴールを示すのではなく、スモールステップで段階的に進める方が、達成感を得やすく、学習を継続するモチベーションにもつながります。

■以下では、当スクールにて受講されている企業様からお問い合わせいただいた際の実際の課題や目標設定について一例としてご紹介します。

「工場現場にて、最低限、マナーのある会話ができること」を目標に

  1. 対象者数:1名
  2. 対象者:ベトナム人
  3. 年齢:26歳
  4. 日本語レベル:N3
  5. 依頼背景
    • 2021年1月以降に、弊社日本本社工場の 正社員エンジニアとして勤務予定
    • 現在は弊社ベトナム法人に勤務中。
    • コロナのため、基本的には自宅で自主学習
  6. 問題
    • 日本語会話ができていない。このままいくと、日本人上司や同僚と会話ができない
      目標レベルは工場現場でマナーある会話ができることです、マスは最低限。外部とのやりとりは現段階ではない。よく間違えるのがお願いをするのかやってもらいたいのか、細かいところが伝わらず困っている。
    • 質問に端的に答える、スピード感をもって会話、わからない事はすぐ質問する癖を身に着けてほしい。

■目標設定:「工場現場にて、最低限、マナーのある会話ができること」

■導入前事前レベルチェック時の日本語レベル:会話レベル…4(=JLPT N4相当)

  • 基礎的な日本語文型は定着しており、成長は見込める。
  • 問題点は、日本語での発話に慣れておらず流暢さ、スムーズさに欠ける。
  • また敬語表現が身についておらず(N4後半レベル)、必要な授受表現も曖昧。
  • 日本語での発話に慣れていないため、日本語で自分の意見を簡潔にまとめて伝えることができない。

■レベルに基づく学習プランと使用テキスト
マンツーマンレッスンで、6ヶ月間、合計50時間にて受講(週2回のレッスン(1時間/回)+宿題)

■結果(専任担当講師からのフィードバック)

  • 総合評価
    ビジネスにおいて使用する表現方法については理解し、身についている。また本人も日本人社員との会話は比較的スムーズにできているし、分からない事があれば質問する環境があるので、大丈夫だと話していた。日本語に対してのモチベーションも高く、12月もしくは来年にはN2の試験を受けたいと話していた。
  • 会話レベル:6.5(会話レベル10段階評価に基づく)
    質問に沿った回答は90%以上。業務で使用する用語を使って説明、要約などを行ってもらったが分かりやすく話すことができている。また具体例を挙げながら話すことのほか、自身が説明した内容に対して理解しているかどうか都度確認を行うこともできる(私が話している内容が分かりますか。今の説明でわかりにくいところはありませんか、など)

日本語研修の目標とレベル設定に役立つ日本語力の指標

目標設定を具体的にすることは困難な場合もあります。そこで、目標やレベル設定の際に参考にできる日本語力の指標を以下に紹介します。

①当スクールの独自10段階会話レベル評価

JLPTが、主流ですが、会話力を測るテスト項目が含まれていないことから、JLPT試験で高得点であるが、実際の会話力が低い…という企業からのお問い合わせが非常に多く、当スクールが過去1,000名程度の受講生のレベルをベースに、会話力に特化した10段階評価のレベルを設定しました。公式のものではないため、独自基準として、受講生の現状の会話力レベルチェック、目標設定、受講生がどの程度レベルアップをしたか客観的に数値評価をするために活用しています。

私たちは、OPIレベル基準をもとに、10段階で会話力を評価します。
※OPI(oral proficiensy interview)とは、口頭運用能力を計測するために開発された、1対1のインタビュー形式の試験で、会話力を10段階に分けて評価します。

JLPTレベル

会話レベル

ビジネス現場でできること

初級

N5レベル相当
(日常生活を送る上で最低限必要とされるレベル)

1

「こんにちは」「私は○○人です」「名前は○○です」などいくつかの決まったフレーズを使うことができる。

2

「仕事は~時からです」「仕事は~曜日です」など、日課について簡単に言うことができる。

3

「休みはいつですか」「日曜日です」など、日常的なことについては、短い受け答えができる。

中級

N4~N3レベル相当
(社内でなんとか日本人社員と会話が成立する~比較的スムーズに会話が成立するレベル)

4

聞き返しは多いが、日本人社員がゆっくり話してあげれば、なんとかコミュニケーションは成立するレベル。
「何の仕事をしていますか」「職場はどこですか」のようなシンプルな質問には短い文や単語で答えることができる。

5

日本人社員がゆっくり話せば、コミュニケーションは成立するレベル。会議中の会話内容の理解度は30~40%程度。
自分の業務内容について簡単に説明できる。相手に質問をするなどして、ある程度会話を続けることができる。

6

社内での日本人社員との会話は比較的スムーズにできるレベル。会議中の会話内容の理解度は60%~70%程度。
自分の業務内容について詳細に説明できる。具体的な例を挙げながらわかりやすく説明することができる。

上級

N2~N1レベル相当
(社内で日本人社員とスムーズに会話が成立する~顧客との打合せも1人で十分にできるレベル)

7

社内での日本人社員との会話は問題なくスムーズにできるレベル。会議中の会話内容の理解度は80%~。
よく知っている話題については、充分に話すことができるので、会話も弾む。自分の考えを論理的に伝え、相手を説得することができる。

8

たいていの場合において言葉に詰まることなく、わかりやすく説明することができる。社会的、専門的な話題にもついていける。敬語も十分に使えるので、顧客とのやり取りを1人で任せられるレベル。

超級

かなりネイティブに近い~
ほぼネイティブレベル

9

かなりネイティブに近いですが、ことわざなど独特な言い回しは理解はできても使うことは難しい場合がある。

10

ビジネス経験のある日本人と比べても遜色が無い。

(※1000名のデータに基づく)

②日本語能力試験(JLPT)の「目安」としての活用

日本語能力試験(JLPT)は、世界的に実施されており、各レベルの認定基準は大学入学や企業の採用基準などで広く認知されています。試験はN1からN5の5つのレベルで構成されており、最上位のN1は「幅広い場面で使われる日本語を理解する能力」を示し、最初のレベルであるN5は「基本的な日本語をある程度理解する能力」とされています。特定技能ビザの取得要件もN4レベル(基本的な日本語を理解する能力)を求められています。

ネイティブレベルの日本語を必要とする職種では、N1レベルの日本語能力が求められるでしょう。漢字圏出身者であれば、1~2年の学習期間でN1レベルを目指すことが可能と考えられます。一方、非漢字圏出身者にとっては、N1レベルを目指すのは非常に困難であり、学習開始から2年であればN3かN2レベルを目指すのが現実的です。

ただし、JLPTに注意すべき点として、漢字圏出身者であってもN1に合格していても、「会話」の能力が苦手な場合があることです。これはJLPTが主に「読む」と「聞く」の能力を評価する問題に偏っているためです。

参考:https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html

③BJTビジネス日本語能力試験(BJT)

BJTビジネス日本語能力試験は、ビジネスシーンで必要な日本語能力を測るテストであり、5つのレベルに分かれており、ビジネス向けの内容が含まれています。(※参考:https://www.kanken.or.jp/bjt/about/level_sample.html) 目標の設定は、受講者の現在の日本語能力や個別の特徴を把握した上で行われるべきであり、どのスキルを伸ばしたいかや職場の要求との調整が重要です。企業の研修が成果を上げるためには、詳細な分析を行い、研修内容を適切に決定することが必要です。

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