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日本語初級(N5相当)の外国人メンバーにどう話せば伝わる?具体例・動画で見る"伝わる話し方"
2026年3月1日 公開

外国人社員を採用したものの「指示がうまく伝わらない」「わかったと言ったのにミスが起きる」といった悩みを抱える管理職や現場担当者は多いのではないでしょうか。
特に日本語能力試験(JLPT)N5相当の初級レベルの外国人社員は、日本人同士の「言わなくても何となくわかる」ことが理解できません。
本記事では、なぜ初級レベルの社員に指示が伝わらないのかという根本原因を整理し、ビジネス現場で即実践できる具体的な話し方のモデルを動画とともに解説します。
なぜN5相当レベルの外国人社員に指示が伝わらないのか?
外国人社員、特にN5レベルのスタッフに指示が伝わらない最大の理由は、日本人の話し方が彼らの「言語処理キャパシティ」を大幅に超えてしまっていることにあります。
長文(接続詞使用時)に対する処理能力が不足している
N5レベルの学習者は、単語一つひとつの意味は理解できても、それらが接続詞で繋がれた長い文になると、文の構造を正しく分解できなくなります。
一文の中に複数の指示(マルチタスク)が含まれると、脳内での翻訳が追いつかず、結果として「最後の方に言われたことだけ」しか記憶に残らないといった現象が起こります。
抽象的な語彙を使うことで解釈・理解に乖離が生まれてしまう
ビジネスシーンで多用される「対応する」「調整する」「確認する」といった言葉は、非常に便利な反面、具体的に何をすべきかが不明確な抽象語です。
文脈を読む力が未発達な外国人社員にとって、「確認」が「ミスをチェックする」ことなのか「上司に指示を仰ぐ」ことなのか、正確に判断することは容易ではありません。
曖昧な表現を使うことで、混乱が生まれてしまう
「あとで」「できるだけ早く」「適当に」といった日本特有の曖昧な表現は、外国人社員を最も困惑させます。
「日本人的感覚」を要する「曖昧表現」での会話は外国人社員にとって、具体的な時間や数値、基準が示されないため、実行不可能なタスクと同義になってしまうのです。
これが積み重なると、現場でのミスや外国人社員自らの「勝手な判断」を引き起こす要因になります。
現場でよくある"伝わらない話し方"
的確に出したはずの指示が、なぜ「伝わらない」のか。具体例をもとに、その問題点を分解して解説します。
例1:情報過多!「~て、~て、」
×「マニュアルのとおりに作業して、あとで報告してください。」
NG理由
- 「~して、~してください」という複数の指示が一文に入っており、情報が多すぎる
- 「報告」という語彙を知らない場合がある
- 何の「あとで」なのかわからない
- 誰に何を報告すればいいのかわからない
以上の理由から、結局、いつ、どうしたらいいのかわからず、報告漏れなどの原因になります。
正しく指示を伝えたいなら、「マニュアルのとおりに作業してください。作業が終わったあとで、『終わりました』と私に言ってください」というように、タスクの順番を1つ1つ分けて伝える、何を誰に対してどうすればいいのかを具体的に伝える必要があります。
例2:締め切りはいつ?「できるだけ早く」
×「できるだけ早く対応してください。」
NG理由
- 「できるだけ早く」は個人の感覚に依存するため、優先順位が伝わらない
- 「対応」という言葉も、具体的に「メールを送る」のか「電話をする」のか、アクションを特定できていない
以上の理由から、どれくらいのスピード感で何をすればいいのかわからず、締め切りが守られない原因になります。
正しく指示を伝えたいなら、「3時までに〇〇さんに、△△についてメールしてください」というように、具体的な時間、誰に対して、何でどうすればいいのかを具体的に伝える必要があります。
例3:見ればいいの?ミスを直せばいいの?「確認してください」
×「この件、確認しておいてください。」
NG理由
- 「確認」の定義が広すぎる
- 「目を通すだけ」なのか、「不備を見つける必要がある」のかがわからない
以上の理由から、具体的に何をすればいいのかわからず、思わぬミスや齟齬が生じます。
正しく指示を伝えたいなら、「〇〇さんに『△△でいいですか』と質問してください」「この文は〇〇語(外国人社員の母語)で間違っていませんか、見てください。ミスがあったら教えてください」などのように、やってもらいたい動作を具体的に、端的に伝える必要があります。
具体例【日々の現場で頻出する5つの場面】
では、具体的にどのような表現を使うと、外国人社員にとってわかりやすい指示になるのでしょうか。
以下では、日々の現場でも頻繁に直面する、N5レベル相当に方に話すときに、使える文型表現を5つピックアップして、の日本語講師が動画でご紹介しています。
各動画での、
- 話すスピード
- 一文の長さ
- 語彙の具体性
- 確認の取り方
これらの点を意識しながら、実際に、日本語講師がどのように生徒に説明をしているか、見てみましょう。
1.作業基準の明確な伝達「~とおりに」
正確さが求められる現場シーンでは、視覚・聴覚情報とセットにした具体的な指示が不可欠です。
「~とおりに」は指示を視覚・聴覚情報と一緒に伝えるのにピッタリな表現と言えるでしょう。
参考動画
現場で使える例
- 「この図のとおりに置いてください」
- 「わたしが書いたとおりに書いてください」
- 「このマニュアルの1ページを見てください。このとおりに作業してください。」
「~とおりに」を使う場合、基準となるものを明確化し、やってほしい動作を具体的に伝えることもポイントです。
2.作業順序の確実な指示「~あとで」
手順が複数ある場合は、時間軸を明確にする表現を使います。
参考動画
現場で使える例
- 「作業が終わったあとで、『終わりました』と私に言ってください」
- 「休憩したあとで、説明します」
- 「昼ごはんのあとで、検査室に来てください」
「~たあとで」で指示を出す時は「前の作業の完了後」ということを強調すると伝わりやすくなります。
3. より丁寧でわかりやすい依頼「~んですが、~ていただけませんか」
「~んですが、~ていただけませんか」を同僚や部下に対して使うことに疑問を持たれるかもしれませんが、依頼理由と依頼内容を明確に伝えられ、丁寧さも伝わります。
参考動画
現場で使える例
- 「〇〇さん(外国人社員)の国の言葉でメールを書きたいんですが、手伝っていただけませんか」
- 「作業室にゴミがたくさんあるんですが、捨てていただけませんか」
- 「とても重いんですが、一緒に持っていただけませんか」
「~んですが、~ていただけませんか」は依頼理由と依頼内容が同時に伝えられる反面、一文が長くなりがちなので、ゆっくり、ハキハキ言う必要があります。
4.自発性を促すアドバイス「~ほうがいいです」
改善を提案したり、指示を出す際、「~してください」という表現よりも、「~ほうがいいです」で、より良い手段ややり方を指し示すと効果的です。
参考動画
現場で使える例
- 「この箱は、入口ではなく、あそこに置いたほうがいいです」
- 「会社では日本語で話したほうがいいですよ」
- 「これは部長が使いますから、2階に持って行ったほうがいいですね」
指示や命令ではなく、アドバイスとして伝えると外国人社員も受け入れやすくなるでしょう。また、語尾に「ね」や「よ」を付けることでより柔らかい表現になります。
5.段取りの共有と事前準備「~ておきます」
会議準備などの事前対応を指示する際、完了後の状態をイメージしてもらいやすくなります。
参考動画
現場で使える例
- 「会議の前に、資料を印刷しておきます」
- 「社長が来る前に、掃除しておきましょう」
- 「作業を始める前に、設計図を見ておいてください」
「~前に」を使い、時間軸をはっきりさせておくことで、タスクの順番がわかりやすく、何のための準備なのか、何のために必要なことなのかが伝わりやすくなります。
ここまで見てきたように、「伝わりやすい話し方」のポイントは「外国人社員の日本語処理能力に合わせた情報のスリム化」です。
そのため、
- 話すスピード
- 一文の長さ
- 語彙の具体性
- 確認の取り方
以上の4つのポイントを意識して話すことが、円滑なコミュニケーションの第一歩となるでしょう。
まとめ:「伝わりやすい話し方」の効果と課題
外国人社員への指示を「伝わりやすい話し方」に言い換えることは、現場の生産性を守るための重要なスキルです。しかし、同時に解決が容易ではない課題もあります。
管理職の負担
すべての指示を常に「伝わりやすい話し方」に言い換え続けるのは、周囲の日本人社員、特に管理職にとって大きな負担となります。
業務上、どうしても指示に時間をかけていられない場面もあるでしょう。
また、日本人社員と外国人社員の間で齟齬が生じた場合、対応するのは管理職です。
外国人社員の日本語レベルに合わせ、同時に業務を進めていくのは至難の業と言えるでしょう。
業務の高度化
業務内容が専門的になるにつれ、どうしても抽象語や複雑な概念を避けられない場面が出てきます。
外国人社員の経験値や業務上のスキルが上がり、新たに任せたい業務があったとしても、「伝わりやすい話し方」だけでは業務の詳細を説明できず、せっかくの外国人社員のスキルが無駄になってしまいかねません。
社員側の自立の必要性
やはり、外国人社員自身が「日本人同士の自然な会話」を理解できるレベル(日本語能力試験N3以上)へとステップアップしなければ、重要な仕事を任せることはできません。
上司側が「話し方のコツ」を掴むのと並行して、外国人社員自身がビジネスの場で通用する「聞く・話す・理解する力」を体系的に身につけることが、真の解決策となります。
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