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ベトナム人留学生を鎖や南京錠で拘束した日本語学校
2022年9月30日 公開
今回ショッキングな事件が福岡県の日本語学校で起こり、SNSを通じて拡散されました。それは留学生のベルトに鎖をかけた上に南京錠をつける日本語学校の職員と、ベトナム人留学生の動画です。
瞬く間にSNSやニュース、新聞で取り上げられることになりました。今回はなぜこの事件が起こってしまったのか、その背景についても考えていきたいと思います。
ベトナム人留学生が夢みた日本
このベトナム人留学生は、車が好きで自動車関係の仕事に就きたいという思いがあり、日本に来日しました。そのため、まず福岡県にある日本語学校へ2020年に入学しました。
しかし、いざ入学してみると学校の授業は勉強に集中できる雰囲気ではなく、留学生たちは自由に過ごし、寝ている人もいました。先生たちが授業をしていないこともあり、他の日本語学校へ転校したいと考えていたそうです。
そのため、その留学生はウソをついて母国へ帰国する旨を伝えたところ、このような人件侵害につながる事件が起こりました。ベトナム人留学生は「人間なのに、動物みたいな扱いをされた、私の人権がなくなったと感じた」と話しており、日本でなぜこのようなショッキングなことが起こってしまったのか、考えさせられる事件になりました。
実際に問題となった動画を見てみると、日本語学校の職員がこのベトナム人留学生に鎖をかける際、笑い声が入っており他の人達も面白がっている雰囲気を感じました。また日本語学校側は、寮の部屋の外から翌日まで監視も続けていたそうです。
事件の背景にあるのは?
現在この日本語学校は福岡出入国在留管理局によって、日本語学校としての登録を今後5年間抹消されることが決まりました。
この事件の背景にある日本語学校の考え方としては、不法残留(オーバーステイ)になることを恐れていた可能性があります。
日本語学校はもちろん不法滞在にならないように在籍管理に努める必要があります。例えば、日本語学校は定期的に、入国在留管理局へ留学生の出席率を提出するほか、在留カードの更新などをきちんと行わなければなりません。
そのため、在籍している留学生の中で不法残留の数が一定数を超えると、日本語学校としての受け入れができなくなるほか、適正校の認定からも除外されてしまう可能性が考えられます。
今回起こったこの事件も、日本語学校側が不法残留になるのを避けるために行った可能性が考えられるでしょう。また他の学生や職員の前でこのような行為を行うのは、同じことを別の留学生にさせないように、見せしめのために行われたのではないかと考えられます。
他にパスポートを取り上げようとしたり、寮の外で監視することも同様の意図があると思われます。このような人権を無視した行為は決して許されることではありませんし、早急に改善が必要です。
私たちにできること
今回このような事件が起こったのには、もう一つ理由があると考えています。それは、仮に留学生が別の日本語学校で勉強したいと考えた時に、転校するのがとても難しいということです。また入国前に、自分が望む日本語学校に入学できているかどうかということです。
以前、日本語学校で勤務していた際、どこの日本語学校に行くのか分からずに来日したという話を聞いたことがあります。こちらとしては大変驚きましたが、仲介業者が日本語学校を決めるということもあるようです。
また多くのアジアからの留学生は、日本へ行くために借金をし、入学する日本語学校に学費を納めてから来日しています。そのため、転校したいと考えた時に、学費をまた払わなければならないことや手続きが面倒であるため、そのまま不法残留となって日本でお金を稼ぐことを選択をする留学生もいます。
このように留学生たちが少しでも望む選択ができるように、対策を考える必要があるでしょう。
私たちにできること
私たち日本語教師やその職員たちは、留学生が日本に来て初めて接する日本人です。日本人に対してのイメージが良くなるのもそうでないのもこの時期だと思っています。もちろん人権侵害はあってはならないことです。
今回のような事件が起こらないためにも、日本語学校への管理体制や法整備などを早急に進めていく必要があると考えます。