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外国人の日本語教育方法に関する問題点と成果の出る方法について
2024年9月17日 公開
近年、日本で働く外国人従業員の数が急増しています。少子高齢化による労働力不足や、グローバル化の進展により、日本の企業はますます多様な人材を受け入れるようになりました。その中で外国人従業員が円滑に業務を進めるためには、日本語力の向上が不可欠です。
多くの外国人従業員を抱えている企業は対してビジネス日本語の教育や研修を導入しているところも増えてきていきますが、なかなか思うように日本語力向上の成果が出なかったり、悩まれている企業様のお声を多数聞いております。本記事では、現在の外国人向けの日本語教育について、当社の事例を交えつつ、問題点の解消や外国人従業員の効果的な日本語教育・研修について紹介をしていきます。
1. 外国人向けの日本語教育の需要は右肩上がり
少子高齢化の影響で、国内の労働力は減少傾向にあり、そのため多くの企業が人手不足に直面しています。特に、製造業や建設業、介護業界などでは、外国人労働者の存在が欠かせなくなってきています。この状況を背景に、多くの企業が外国人の採用に積極的になっており、その数は年々増加しています。特にITやエンジニアリングの分野では、優秀な外国人技術者が日本企業で働くケースが増えており、これが企業の競争力向上に寄与しています。
外国人従業員の増加には、政府の政策も一役買っています。日本政府は「特定技能」や「高度専門職」などのビザを通じて、外国人労働者の受け入れを推進しています。これにより、特定の技能を持った外国人が合法的に日本で働くことができる環境が整備され、企業はこれらの人材を積極的に採用するようになりました。
ただし、外国人従業員の増加に伴い、課題も浮き彫りになっています。その一つが、言語の壁です。日本語が母語ではない外国人にとって、職場での円滑なコミュニケーションや、業務遂行に必要な日本語能力を身に付けることは容易ではありません。特にビジネスの場では、専門的な日本語や敬語の使用が求められるため、外国人従業員が苦労する場面が多く見受けられます。このような状況を解決するため、多くの企業ではビジネス日本語の教育や研修が導入されています。
2. 外国人従業員の日本語教育の問題点
外国人従業員にとって、日本語学習・研修の環境が整っていないということが問題となっています。公的機関の出している在留外国人に対する基礎調査報告書の中でも、日本語学習の困りごととして、日本語教室・語学学校等の利用・受講料金が高いが23.3%、都合のよい時間帯に利用できる日本語教室・語学学校等がないが15.6%、日本語を学べる場所・サービスに関する情報が少ないが15.0%、近くに日本語教室・語学学校等がないが11.3%という結果になっています。
また、文化庁がまとめた「令和3年度国内の日本語教育の概要」によると、全国1896市区町村のうち46%は、外国人労働者が通える日本語教室のない「空白地域」とされています。日本語教師は東京などの大都市に集中し、地方では日本語学習の場が整っていないというのが現状です。そのような状況にあって、ここ2,3年では変化の兆しが出ており、時間と場所を選ばないオンライン形式での日本語レッスンが増えてきています。
コロナ禍以前は対面式やスクール受講形式での日本語教育・研修が主流でしたが、コロナの感染抑止のため非対面型、いわゆるオンライン形式での日本語レッスンの普及スピードが加速しました。
弊社はコロナ禍以前より、外国人従業員のための日本語教育・研修をオンライン形式でのレッスンでサービスを創業時より提供しておりますが、ここ数年の日本語教育におけるオンラインレッスンの需要の高まりを肌で感じており、従来の日本語教育の課題もオンラインレッスンであれば改善できるため、日本語教育の主流の形のひとつとして普及が進んでいくと考えています。
参考:出入国在留管理庁:令和2年度 在留外国人に対する基礎調査報告書
3. 外国人従業員の日本語能力の現状と課題
日本で働く外国人従業員の日本語能力は、個々の経験や学習状況によって大きく異なります。多くの企業では、外国人従業員の日本語能力を「日本語能力試験(JLPT)」のN5からN1までのレベルで評価することが一般的です。ここでは、各レベルの大まかな割合と企業が求める実際の日本語レベルについて見ていきます。
JLPTのN5は最も基本的な日本語レベルで、日常会話や簡単な文章を理解できる程度です。逆に、N1は最も高度なレベルであり、ビジネスや学術的な場面で複雑な会話や文章を理解できることを示します。一般的に、日本企業で働く外国人従業員の中では、N3からN2レベルが割合として多く、N1に達している人は少数派です。
N2レベルでは、日常会話や簡単なビジネスメールのやり取りが可能ですが、業務の専門用語や敬語の使用が難しいと感じる場合が多いです。また、業務上のやり取りや基本的な会議に参加することができるようになりますが、より高度なビジネスシーンでは苦労することがあります。
企業が求める実際の日本語レベル
多くの企業では、N2レベル以上の日本語能力を求める傾向があります。一般的にはN2レベルであれば、日常業務でのコミュニケーションが可能であり、業務上の指示を理解し、報告や連絡が適切に行えるとされています。
しかし、N2レベル以上であっても日本独特のビジネス習慣や言語文化のため、なかなか日本語でのコミュニケーションが上手くいかないケースも少なくありません。理由としてJLPT試験(日本語能力試験)には会話力チェックは含まれていないため、JLPTレベルと実際の会話力の間に差が発生するためになります。
そのため、外国人従業員が入社後にビジネス現場で独り立ちができるように企業側として外国人従業員への日本語力向上の支援・研修サポートが重要になってきます。
3. 外国人社員への日本語教育で成果の出る方法
外国人社員の日本語教育で成果が出るポイントについて紹介をしていきます。
【個々のレベルに合わせて研修を行う】
外国人社員一人ひとりの日本語力レベルや苦手な点、学習課題への対応が必要です。日本語学習歴や出身国により、学習上の課題はさまざまですが、まずは重点的にウィークポイントを徹底強化することで自信が生まれ、確実なレベルアップにつながります。
研修開始前に日本語力のレベルチェックと分析を徹底的に行い、弱点や課題の克服に直結するプログラム、可能であればカスタマイズプログラムを作成します。外国籍社員の「日本語レベル」と「ビジネス現場でできること」を理解することが適切な目標設定・達成へとつながります。以下は弊社で1,000名以上の受講生実績データをもとにした、会話レベルと現場でできることについてをまとめた表になります。
JLPTレベル |
会話レベル |
ビジネス現場でできること |
|
初級 |
N5レベル相当 |
1 |
「こんにちは」「私は○○人です」「名前は○○です」などいくつかの決まったフレーズを使うことができる。 |
2 |
「仕事は~時からです」「仕事は~曜日です」など、日課について簡単に言うことができる。 |
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3 |
「休みはいつですか」「日曜日です」など、日常的なことについては、短い受け答えができる。 |
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中級 |
N4~N3レベル相当 |
4 |
聞き返しは多いが、日本人社員がゆっくり話してあげれば、なんとかコミュニケーションは成立するレベル。 |
5 |
日本人社員がゆっくり話せば、コミュニケーションは成立するレベル。会議中の会話内容の理解度は30~40%程度。 |
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6 |
社内での日本人社員との会話は比較的スムーズにできるレベル。会議中の会話内容の理解度は60%~70%程度。 |
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上級 |
N2~N1レベル相当 |
7 |
社内での日本人社員との会話は問題なくスムーズにできるレベル。会議中の会話内容の理解度は80%~。 |
8 |
たいていの場合において言葉に詰まることなく、わかりやすく説明することができる。社会的、専門的な話題にもついていける。敬語も十分に使えるので、顧客とのやり取りを1人で任せられるレベル。 |
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超級 |
かなりネイティブに近い~ |
9 |
かなりネイティブに近いですが、ことわざなど独特な言い回しは理解はできても使うことは難しい場合がある。 |
10 |
ビジネス経験のある日本人と比べても遜色が無い。 |
【基礎的な日本語力を底上げつつ、実際にリアルで使うビジネス日本語を習得する】
まず 基本となる「聴く」「話す」「書く」「読む」の4技能を確実に高めながら、職場配属後の状況をリアルに想定したコミュニケーションスキルの研修を行い、職場ですぐに活用できるようにする必要があります。研修でカバーすべきスキルは、例えばeメールの書き方や会議での対応、敬語、職場関係者との話し方などです。まずは基本となる日本語力のレベルを一定以上に上げながら、そうしたビジネスコミュニケーション力を習得させます。
【日本独特のビジネス慣習への理解を高める】
「報・連・相」や「時間内厳守」などの日本のビジネスマナーや日本人の仕事への姿勢や考え方を理解させます。しっかりと腹落ちをしてもらうことも大事です。
【個々のレベルに合わせて研修を行う】
外国人社員一人ひとりの日本語力レベルや苦手な点、学習課題への対応が必要です。日本語学習歴や出身国により、学習上の課題はさまざまですが、まずは重点的にウィークポイントを徹底強化することで自信が生まれ、確実なレベルアップにつながります。研修開始前に日本語力のレベルチェックと分析を徹底的に行い、弱点や課題の克服に直結するプログラム、可能であればカスタマイズプログラムを作成します。
以下は会話レベルに合わせたオンラインレッスンの一例になります。会話レベル4と8でのレッスン内容の違いをご確認いただけると思います。
会話レベル4
国籍:ベトナム 建設業界 技術者
会話レベル8
国籍:中国 ITシステム開発 技術者
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。外国人社員への日本語教育・研修についてご興味のある方や、ご検討をされている方、既に研修を導入しているがなかなか成果が出なくて困っている方がいらっしゃいましたらぜひ弊社までお問い合わせください。