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【JLPT・NAT-TEST・BJTをCEFR基準で徹底比較!】外国人社員研修に最適な日本語試験とは?

2025年10月31日 公開

グローバル化が進む今、外国籍社員の採用や育成を行う企業は年々増加しています。
その中で課題となるのが、「社員の日本語力をどのように測定・評価するか」という点です。

現場では「会話はできるが、書類が読めない」「敬語が不自然」「電話応対が苦手」といった課題が多く、単に“話せるかどうか”だけでは、業務に必要な言語力を判断できません。

現在、日本語力を客観的に示す主要な試験は次の3つです。

  • JLPT(日本語能力試験):世界基準の日本語力を測定する公的試験
  • NAT-TEST(日本語NAT-TEST):JLPTと同形式で実施される民間試験
  • BJT(ビジネス日本語能力テスト):実務的な日本語運用力を評価する試験

本記事では、これら3つの試験をCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の基準で比較し、
採用・研修・評価などの企業人事における活用法をわかりやすく解説します。

社員教育に最適な試験は目的で選ぶ

外国籍社員の日本語力評価において最も重要なのは、「目的を明確にすること」です。

たとえば、

  • 採用時:一定の基礎力があるかを確認したい
  • 研修時:「社内文書を読めるか・報告できるか」を評価したい
  • 現場:「顧客対応やチーム内コミュニケーションの正確さ」を見たい

など、場面によって目的が異なります。

目的ごとに試験を整理すると、次のようになります。

  • JLPT:日本語の「知識」を測る(読む・聞く中心)
  • NAT-TEST:日本語力の「確認・判定」を短期間で行える
  • BJT:職場での「実践的な日本語運用能力」を測定する

つまり、JLPT=基礎力、NAT-TEST=確認、BJT=実務力と捉えるのが適切です。

以下、それぞれの試験をCEFR基準で詳しく比較していきます。

CEFRとは?

CEFR(セファール)とは、「Common European Framework of Reference for Languages」の略で、ヨーロッパ評議会が定めた国際的な言語能力の評価基準です。

英語・フランス語・ドイツ語など、複数の言語で共通して使用できる評価軸として作られ、
現在は日本語教育にも広く導入されています。

CEFRは、言語能力をA1〜C2の6段階に分類します。

「A」は初級、「B」は中級、「C」は上級を示し、数字が大きいほど高いレベルを表します。

各段階を簡単に整理すると以下のようになります。

レベル 目安 能力の概要
A1 初級 ごく簡単な表現を理解し、挨拶や自己紹介ができる
A2 基礎 日常的な会話や短い説明ができる
B1 中級 仕事や学校など、身近な話題を理解し会話できる
B2 中上級 複雑な文章や議論を理解し、意見を明確に述べられる
C1 上級 抽象的・専門的な内容を理解し、流暢に表現できる
C2 最上級 母語話者に近い運用が可能

CEFRの特徴は、単なる知識量ではなく、「実際のコミュニケーションで何ができるか(Can-do)」を基準にしている点です。

たとえば、B1レベルであれば「仕事上の指示を理解して行動できる」、B2レベルであれば「自分の意見を根拠とともに説明できる」といった行動ベースの評価が行われます。

企業がCEFRを参考に日本語力を判断するメリットは、「客観的で国際的な比較ができる」ことにあります。

JLPT・NAT-TEST・BJTなど、試験ごとに基準が異なっても、CEFR基準に置き換えることで社員の日本語レベルを統一的に管理できます。

採用時のスクリーニングや研修効果の測定にも役立つため、グローバル人材マネジメントの共通言語として活用が進んでいます。

JLPT(日本語能力試験)の特徴と位置づけ

試験の概要と対象者

JLPT(Japanese-Language Proficiency Test)は、日本語を母語としない学習者向けの代表的な試験です。

主催は国際交流基金(JF)と日本国際教育支援協会(JEES)で、世界90か国以上、年間約100万人が受験しています。

大学進学、就職活動、在留資格(特定技能・高度専門職など)の要件にも利用され、日本語能力の国際的な共通指標として広く認知されています。

試験は年2回(7月・12月)に実施され、レベルはN1〜N5の5段階。N1が最も難しく、N5が最も易しいレベルです。

測定できる能力

JLPTは、以下の3つの項目から日本語理解の総合力を測定します。

  • 言語知識:文法や語彙の理解、運用力
  • 読解:文章の要点理解、意図把握、情報整理
  • 聴解:会話・放送・説明を聞き取り、内容を理解する力

ただし、話す・書くといったアウトプット能力は評価対象外です。

このため、「文法力や読解力の有無を確認したい場合」に適しています。

企業が外国籍社員の基礎力を把握するには、最も標準的で信頼性の高い試験です。

CEFRとの対応

CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)は、ヨーロッパを中心に国際的な語学力の基準として採用されています。

JLPTレベル CEFR対応 概要
N1 B2~C1 抽象的な議論や専門的内容を理解できる
N2 B1上位~B2 複雑な文章やビジネス文書を理解できる
N3 A2~B1 日常的な日本語の理解・運用が可能
N4 A2 基本的な日本語の理解が可能
N5 A1 ごく簡単な日本語表現を理解できる

企業目線では、N2以上=実務に支障がないレベルがひとつの目安となります。

NAT-TEST(日本語NAT-TEST)の特徴と位置づけ

試験の概要と対象者

NAT-TEST(Japanese NAT-TEST)は、JLPTとほぼ同形式で作問される民間の日本語試験です

「専門教育出版 日本語NAT-TEST運営委員会」が運営しており、アジア各国を中心に年6回以上開催されています。

JLPTが年2回であるのに対し、NAT-TESTは実施頻度が高く、結果も数日〜1週間以内に判明します。

そのため、「JLPTを待たずに社員の日本語力を確認したい」「入社前に基礎力を測りたい」企業にとって非常に実用的です。

特に、技能実習生や特定技能人材の採用現場では、即戦力判定に使われています。

測定できる能力

NAT-TESTの出題構成は次の3区分です。

  • 文字・語彙
  • 読解
  • 聴解

内容・難易度はJLPTと同等で、形式もほぼ共通しています。

異なる点は、実施回数と結果のスピード。短期間でフィードバックが得られるため、研修計画やスキルチェックに活用しやすいのが特徴です。

CEFRとの対応

以下の対応表はNAT-TESTを運営する専門教育出版 日本語NAT-TEST運営委員会による公式の見解ではなく、おおよその対応表です。

NAT-TEST級 CEFR対応 概要
1級 B2~C1 複雑な文書や専門分野を理解できる
2級 B1上位~B2 実務的な日本語を使いこなせる
3級 A2~B1 日常業務に必要な会話力を持つ
4級 A2 簡単な会話や指示理解ができる
5級 A1 初歩的な日本語の理解が可能

JLPTとの対応目安は、NAT-TEST 2級≒JLPT N2、3級≒N3と考えるのが妥当でしょう。

外国籍社員の育成計画において、JLPTへのステップアップを図る中間試験としても有効です。

BJT(ビジネス日本語能力テスト)の特徴と位置づけ

試験の概要と対象者

BJT(Business Japanese Proficiency Test)は、ビジネスシーンにおける日本語コミュニケーション力を測る試験です。

日本貿易振興機構(JETRO)が開発し、現在は公益財団法人日本漢字能力検定協会が運営しています。

JLPTやNAT-TESTが学習者向けなのに対し、BJTは実務者・社会人向け

実際に日本企業で働く人材の「使える日本語力」を評価する目的で設計されており、国内外の企業が採用・昇格・研修評価などで導入しています。

JLPTのような「合格・不合格」はなく、0〜800点のスコアからレベルをJ5~J1+の6段階で評価します。

測定できる能力

BJTでは、知識よりも状況判断力・ビジネス敬語・要約力を重視します。

問題はテストセンターのパソコン上で出題され、会話・資料・メール・広告など多様な場面が登場します。

出題形式の例:

  • 上司への報告・指示をどう伝えるか
  • 取引先との会話でどの表現が適切か
  • メール文面の修正・選択

単なる文法理解ではなく、「相手に伝わる日本語」を使えるかが問われます。そのため、BJTのスコアは職場での即戦力を示す指標として非常に有効です。

CEFRとの対応

以下の対応表はBJTを主催する公益財団法人日本漢字能力検定協会による公式の見解ではなく、おおよその対応表です。

BJTランク CEFR対応 概要
J1+〜J1 C1〜C2 複雑な交渉・提案・会議に対応できる
J2 C1 一般的なビジネス文書を理解・発信できる
J3 B2 職場内での指示・報告がスムーズにできる
J4 B1 簡単な業務連絡に対応可能
J5 A2 基本的な挨拶・応対ができる

以上から、J3レベルが職場対応の最低ラインと言えるでしょう。

ビジネスシーンでの自然な会話力を重視する場合、BJTのスコアはJLPTより実務的な指標になります。

CEFR基準で見る3試験の比較表

試験名 主な対象 測定内容 CEFR対応 特徴
JLPT 学習者・留学生 読解・聴解中心 A1〜C1 世界共通の日本語力基準。信頼性が高い。
NAT-TEST 学習者・実習生 JLPT形式(3区分) A1〜C1 実施回数が多く、結果が早い。手軽に受験可能。
BJT 社会人・企業 ビジネス運用力 A2〜C1 実務対応力や敬語運用力を評価できる。

CEFRを基準に見ると、3試験はいずれもA1〜C1をカバーしていますが、測る能力の方向性が異なることがわかります。

JLPTとNAT-TESTは「知識型」、BJTは「実践型」と言えます。

目的別のおすすめ活用法

採用時の日本語力判定に使う場合

採用の段階では、JLPTまたはNAT-TESTのスコアが基準になります。

特にN2以上の合格者は、社内文書や会議内容を理解できるレベルですが、N3レベルは「日常会話はできるが専門的表現は難しい」と判断されます。

NAT-TESTは実施頻度が高く、結果もすぐに出るため、海外拠点での採用前テストとしても活用可能です。

企業によっては、「NAT-TEST 2級またはJLPT N2相当以上」を採用基準に設定していますが、JLPTまたはNAT-TESTを採用基準とする場合、ビジネスシーンにおける対応力までは判断できない点に注意する必要があります。

研修・昇格評価に使う場合

研修や昇格の評価では、BJTスコアの活用が有効です。JLPTでは測れない「ビジネス文書理解」「社内会話の適切さ」「敬語運用力」など、職場での実際のパフォーマンスに直結する力を評価できます。

たとえば、

  • J3(B2相当):チーム会議で発言・報告ができる
  • J2(C1相当):上司・顧客とのやり取りがスムーズ
  • J1(C1~C2相当):商談・プレゼンが自然に行える

という明確な基準があるため、昇格・管理職登用の客観的指標として活用できます。

技能実習・特定技能の基礎教育に使う場合

技能実習生や特定技能人材の教育では、「作業指示を理解し、安全に行動できる」ことが求められるため、NAT-TEST 5〜4級またはJLPT N5〜N4取得が基準です。

NAT-TESTは試験機会が多いので、研修初期段階で学習進度を測定するのに適しています。

3試験の組み合わせ活用例

企業が社員の日本語力を段階的に育成するには、試験を組み合わせて活用するのが効果的です。

ステージ 活用試験 目的
採用前 NAT-TEST 入社候補者の基礎力確認
入社後(研修期) JLPT 日本語知識の定着・育成段階の確認
配属前・昇格前 BJT 実務対応力・コミュニケーション力の評価

このように設計することで、「知識→実践→応用」の成長ステップを可視化できます。

企業側も教育効果を数値で把握でき、教育投資の妥当性を明確にできます。

まとめ:目的を明確にして日本語教育を最適化

外国籍社員の日本語力向上には、目的に合った試験選びが欠かせません。

  • JLPTは基礎知識と理解力の把握に最適
  • NAT-TESTは短期間での実力チェックに有効
  • BJTは職場対応力の可視化に適している

これらを組み合わせることで、採用から教育・評価まで一貫した仕組みを構築できます。社員一人ひとりの成長を見える化し、適切な指導や配置につなげることで、企業全体の生産性とチーム力の向上が期待できます。

外国籍社員の日本語教育は単なるスキルアップではなく、組織全体のコミュニケーション品質を高めるための投資です。

目的を明確にし、CEFR基準を参考に効果的な日本語試験を選定することが、これからのグローバル企業に求められる人材戦略の第一歩です。

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