日本語オンラインスクール > 代表者コラム >
【外国人ITエンジニア研修向け】業務で使える日本語教材5選と活用カリキュラム事例
2025年10月31日 公開

ここ数年、日本のIT業界ではITエンジニア人材不足が続いています。この課題を解決する鍵として、高い技術力を持つ外国人ITエンジニアの活躍が重要視されており、その数は年々増加の一途をたどっています。
日本で技術力を存分に発揮し、チームメンバーや顧客と円滑なコミュニケーションを取るためには、「業務で使える日本語」の習得がとても大事です。しかし、一般的な日本語教材では、ITの現場特有の語彙や、開発プロセスにおける実践的な会話(仕様確認、進捗報告、バグ報告など)を網羅的にカバーするのはなかなか難しいのが現状です。
そこで本記事では、「ITの現場」に特化して開発された日本語学習教材を厳選してご紹介します。また、単なる教材紹介にとどまらず、企業人事や研修担当者が「どの日本語レベルの社員に・どのような教材選定をするかのポイントや流れ」についても実際の事例を含めてお伝えします。
1. 『しごとの日本語 IT業務編』

| 教材名 | 『しごとの日本語 IT業務編』 |
| 教材媒体 | 書籍(製本版、電子書籍) |
| 特徴 | IT業界で働く、または働くことを希望するエンジニア向けのテキストです。システム開発の流れに沿って、「ウォームアップ(初級文法確認)」、「場面で覚える(会話の再現)」、「仕様書を読む(読解力・語彙力)」の3部構成で、実務に必要な日本語力を養成します。特に第2章では、システム開発の流れに沿った具体的な会話が再現されており、上司や同僚とのコミュニケーションを具体的にイメージしながら学べます。ITの専門分野に自信がない日本語教師でも使いやすいように配慮されている点も特徴です。 |
| 販売先URL | https://book.alc.co.jp/book/b10029424.html |
2. 『Japanese for IT Business』

| 教材名 | 『Japanese for IT Business』 |
| 教材媒体 | 製本版、電子書籍版(Amazon Kindle) |
| 特徴 | 元ITエンジニアの日本語教師が開発した、ITビジネスに特化した日本語テキストです。日本で働き始めるところから、開発、顧客デモ、アフターサポートまで、システム開発の一連の流れを場面ごとに学べる構成となっています。一般的なビジネス日本語で重視される「敬語」だけでなく、IT現場で頻出する「カジュアルな会話」や、社内コミュニケーションに役立つ表現に重点が置かれています。推奨レベルはJLPT N2相当以上ですが、N3相当程度から使用可能です。 |
| 販売先URL | https://www.jos-corp.com/ittext-jp |
3. ゲンバの日本語 単語帳 IT 働く外国人のためのことば

| 教材名 | ゲンバの日本語 単語帳 IT 働く外国人のためのことば |
| 教材媒体 | 単語帳(書籍)、アプリ |
| 特徴 | この単語帳は日本語初級レベルの方でも無理なく学習できるように構成されており、実際の現場でのヒアリングに基づいたIT分野特有の用語を収録しています。各用語には、現場で聞いたり話したりすることを想定した易しい例文が付属しており、職場ですぐに活用できる実践的な内容です。また、英語、中国語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、ミャンマー語の6言語の対訳が掲載されているため、初学者にも理解しやすいように配慮されています。書籍のほか、音声を確認できる学習補助アプリも提供されています。 |
| 販売先URL | https://www.aots.jp/jp-learning/aots/genba/ |
4. Elementary Japanese for IT Engineers
| 教材名 | Elementary Japanese for IT Engineers〈1〉 |
| 教材媒体 | テキスト(書籍)※無料 |
| 特徴 | この教材は、日本語能力が初級レベルの外国人ITエンジニアを対象としています。ITエンジニアが職場で頻繁に直面する状況に特化した専門的な語彙を習得することを目的に作られています。従来の一般的な初級日本語テキストとは異なり、IT業界の具体的な場面に焦点を当てています。 |
| 提供先URL | https://sgu.iuj.ac.jp/en/about/language/japaness_business/
https://sgu.iuj.ac.jp/en/about/language/japaness_business/img/IT-Engineer.pdf |
5. eラーニング『ITブリッジ』
| 教材名 | eラーニング『ITブリッジ』 |
| 教材媒体 | 動画教材 |
| 特徴 | IT業界で働く外国人スタッフのために開発された、中級(JLPT N3)以上を対象とした実践的なeラーニングになります。複数のIT企業から集めた実務上の日本語データを分析し、実際の開発業務で多く用いられる文体、文型、語彙の特性を学習できる教材です。 |
| 販売先URL | https://naiteibridge.com/service/itbridge/ |
研修カリキュラム事例:大手IT企業の外国人エンジニア研修
以下は、実際に大手IT企業の外国人エンジニア研修で実施したカリキュラム事例です。
対象はN4後半〜N3レベルの受講生で、今回ご紹介した『現場の日本語IT単語帳』を補助教材として取り入れています。
単体で使うのではなく、ベースとなる日本語力を伸ばしながら段階的にIT関連日本語を定着させる構成がポイントです。

例えば、N4〜N3前半の学習者には「にほんごで働く!ビジネス日本語30時間」で職場会話の土台を作りつつ、
『ゲンバの日本語 単語帳 IT』で業務に即した語彙を強化。
さらにN3レベル到達後は「実戦ビジネス日本語会話(中級2)」を組み合わせて、実践的な会話力へと発展させます。
教材選定の5つのポイント:成果につながる研修設計の考え方
外国人エンジニア向けの日本語研修を設計する際には、教材の良し悪しだけでなく、「どの段階で、どの目的で使うか」が成果を左右します。
以下の5つの視点で整理すると、教材選定から研修運用までの設計が明確になります。
1. 現在の日本語レベルを把握する
まず、社員の現状レベルを正確に把握します。
JLPT(N5〜N1)やCEFR-Jなどの客観的指標に加えて、社内での「報告・相談」「ミーティング理解」など実務行動に基づいた評価を取り入れるとより実践的です。→日本語会話レベルのチェック ができるものがおすすめです。
2. 目標とするレベルを具体化する
「N3を取る」ではなく、「日本人上司との1on1で状況報告ができる」
「プロジェクトMTGでタスク説明ができる」
など、業務行動レベルで“できること”を言語化しましょう。
これが教材選定・カリキュラム作成の軸になります。
3. 必要な学習時間を把握する
JLPTで言えば、一般的な日本語教育においてレベルアップに必要な学習時間の目安は以下の通りです:
| レベル | 累計学習時間(初心者から) | 前レベルからの追加学習時間 | 1日1時間学習した場合の目安期間 |
|---|---|---|---|
| N5 | 約150〜300時間 | — | 約5〜10ヶ月 |
| N4 | 約300〜400時間 | 約150〜250時間 | 約5〜8ヶ月 |
| N3 | 約450〜600時間 | 約150〜200時間 | 約5〜7ヶ月 |
| N2 | 約600〜800時間 | 約300〜400時間 | 約10〜13ヶ月(約1年〜1年1ヶ月) |
| N1 | 約900〜1200時間 | 約300〜400時間 | 約1年3ヶ月〜1年8ヶ月 |
目標達成時期(例:6か月以内)から逆算し、1日・1週間の学習量を可視化します。
4.目的に合った教材を選ぶ
基礎力強化用、業務語彙用、会話実践用など、教材の役割を明確化して組み合わせることが大切です。
たとえば:
- 「にほんごで働く!」:職場日本語の基礎
- 「しごとの日本語 IT業務編」:職場でのやりとり練習
- 「ゲンバの日本語 単語帳 IT」:語彙の定着強化(補助教材)
各受講生のレベルや目標に合わせて選定しましょう。このようなカリキュラムやテキストを組み合わせることが効果的です。
5. 定期的に進捗をチェックし、内容を調整する
3〜6ヶ月ごとに理解度を確認し、教材や学習時間を調整します。
とくに中上級レベルでは「聞く・話す」の伸びが見えにくいため、会話ロールプレイやプレゼン課題の録音評価なども取り入れましょう。
→こちらのように各受講生の学習進捗がわかる進め方が状況把握、社内への説明のためにも有効です。
まとめ
日本のIT業界において外国人エンジニアが求められる日本語能力は、単なる日常会話の延長線上にあるものではなく、プロジェクト遂行能力に直結する専門性の高い言語能力です。従来の日本語能力試験(JLPT)で評価されるような、一般的な知識を超え、専門用語と日本の商習慣に根差したビジネスマナーの融合が大事であるため、上記で紹介をしてきたような働く業界に特化した日本語教材を上手に活用することはとても重要になります。
弊社日本語オンラインスクールでは、IT職種をはじめ、様々な業界業種のビジネス現場で使える日本語力を高めるために目標に合わせたカスタマイズレッスンの提供が可能です。もし当記事をご覧になられて、ご興味のある方や 既に研修を導入しているがなかなか成果が出なくて困っている方がいらっしゃいましたらぜひ弊社までお問い合わせください。
【日本語オンラインスクール】
▼参考記事:
IT業界で働く外国人エンジニア向け日本語研修 - 実践的な学習で現場の即戦力に
https://nihongo-jinzai.com/column-page/column112/
急増する中国人ITエンジニア向けの効果的なビジネス日本語研修とは
https://nihongo-jinzai.com/column-page/column117/
インド人ITエンジニア社員向け日本語ビジネス研修ー基礎
https://nihongo-jinzai.com/column-page/column118/
IT業界で働くミャンマー人のITエンジニア向け日本語研修
