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外国人施工管理者の育成に必要な日本語教育とは
少子高齢化により日本の建設現場では深刻な人手不足が続いており、その解決策として外国人材の採用が加速しています。特に技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能制度などを活用した「外国人施工管理者」の登用が増えつつあります。彼らは母国で建築や土木を学んだ専門性の高い人材であり、戦力化が期待されています。
しかし、実際の現場では「日本語の壁」により、そのポテンシャルを十分に活かしきれない事例が少なくありません。図面が読めても日本語での指示がうまく伝わらなかったり、報告・相談が滞ったりすることで、現場での定着や評価に課題が残るケースが多いのです。今後、外国人施工管理者を「使える戦力」として育成していくためには、日本語教育を戦略的に取り入れる必要があります。
施工管理者に求められる日本語力
施工管理者において最も重視されるのは、正確でスムーズなコミュニケーション能力です。具体的には、次のような日本語力が求められます。
- 報告・連絡・相談(報連相):日々の作業内容や異常の報告、他職種との連携に不可欠。
- 現場特有の用語:たとえば「墨出し」「ケレン」「仮設」「拾い出し」など、教科書には出てこない用語。
- 指示の理解と実行:上司や元請からの指示内容を正しく理解し、それを職人に伝える能力。
日本語が苦手な外国人施工管理者の場合、たとえば「指示を出したつもりが誤解されて作業ミスにつながった」「報告のタイミングを逸してトラブルになった」といった問題が起きやすくなります。
こうした課題の解決には、「現場で必要な日本語」に特化した研修の導入が効果的です。日常会話レベルではなく、現場用語や業務に密着した表現を学べる環境が必要です。
よくある課題と現場の声
実際の建設現場では、日本語が原因で生じるコミュニケーショントラブルは想像以上に多く、また深刻です。外国人施工管理者が日常的に直面している課題として、以下のようなものが報告されています。
◆ 指示が伝わらない・誤解される
施工管理職は、現場作業員に対して明確かつ適切な指示を出す必要がありますが、外国人管理者が話す日本語が不明瞭だったり、あいまいな表現を使ってしまうことで、作業員が誤解し、作業ミスにつながるケースがあります。
例:
- 「ここを少し削っておいて」といった抽象的な表現が伝わらず、想定以上に削られてしまった。
- 「午前中にやっておいて」と指示したつもりが、「午前中に着手」ではなく「午前中に終わらせる」と誤解されてしまった。
このように、日本人同士であれば通じる“あいまいさ”が、外国人には大きなハードルとなるのです。
◆ 図面は読めるが伝えられない
外国人施工管理者の中には、母国で工学や建設を学び、図面を読む力や構造に関する知識を持っている人も多くいます。しかし、知識があっても、それを日本語でわかりやすく現場作業員に説明する能力が不足しているため、伝達力にギャップが生じます。
現場の声:
- 「図面の指示は合っているのに、言葉が不明瞭で作業員が混乱していた」
- 「細かい部分をどう伝えていいかわからず、自分で作業をやってしまい、監督業務に集中できなかった」
◆ 安全・品質への影響
コミュニケーション不足は、安全や品質にも直結します。たとえば、「立ち入り禁止区域」や「危険作業中」などの指示を十分に伝えられず、事故のリスクが高まることもあります。作業品質にもムラが出てしまい、後戻り作業や是正対応の増加につながる事例も報告されています。
こうした課題を放置すると、外国人施工管理者本人のストレスや不安、さらには早期離職にもつながりかねません。人事部門や現場責任者が、現場での“日本語のつまずき”に着目し、早期に対策を講じることが不可欠です。
国家資格(二級施工管理技士)について概要
外国人施工管理者のキャリア形成と企業への長期的な定着を実現するうえで、「二級施工管理技士」の取得は極めて重要な意味を持ちます。これは、建設業法に基づく国家資格であり、一定の知識と経験が認められた者にのみ与えられるものです。
◆ 資格取得のメリット
企業側にとっては、外国人材が二級施工管理技士を取得することで、以下のようなメリットが得られます:
- 責任あるポジションへの登用が可能になる:施工管理技士の資格があれば、現場代理人や主任技術者としての配置が法的にも可能になります。
- 信頼性の担保:取引先や元請企業に対して、技能・知識を持った施工管理者が在籍していることを示すことができ、信頼につながります。
- 定着促進・処遇改善:資格を取得することで、外国人社員のモチベーションが向上し、離職防止にもつながります。また、正社員登用や昇格条件に資格取得を組み込む企業も増えています。
◆ 外国人にとっての壁:日本語の読解力
一方で、外国人にとって二級施工管理技士試験の最大のハードルは「日本語での出題内容」です。試験では専門知識だけでなく、設問の日本語そのものが難解であるため、母語話者でも苦戦する内容です。
たとえば、以下のような出題例があります:
- 「安全衛生管理において、元方事業者が講じる措置として不適切なものはどれか。」
- 「施工計画において、工程表を作成する際の留意点として最も適切なものはどれか。」
このように、「不適切なものはどれか」「最も適切なものはどれか」といった日本語独特の設問形式や語彙が理解できないと、正解を選ぶことが難しくなります。文法的な読み取りや二重否定の理解が必要な問題もあるため、日本語力が十分でないと、知識があっても得点に結びつきません。
◆ JLPTだけではカバーしきれない語彙
多くの外国人が日本語能力試験(JLPT)を指標に学習していますが、施工管理技士試験には「施工計画」「出来形管理」「法定帳票」など、JLPTには含まれない建設業界特有の語彙が多数出てきます。そのため、試験対策としては一般的な日本語教育とは別に、「建設専門用語」や「施工関連の読解問題」に特化した支援が必要です。
解決策①:やさしい日本語+現場用語トレーニング
日本語教育の第一歩として注目されているのが、「やさしい日本語」の活用です。「やっておいてください」ではなく「〇〇をしてください」、「これ、お願いね」ではなく「この作業をお願いします」といった明確でストレートな表現に置き換える指導が効果的です。
また、単なる日本語学習ではなく、現場写真・動画・ロールプレイを活用した「現場用語トレーニング」を組み合わせることで、実践的な表現力が身につきます。
解決策②:国家資格の語彙と試験対策支援
資格取得を目指す外国人には、専門用語や法令用語を含む「試験で使われる日本語」の理解が求められます。たとえば「適正な施工管理」「安全衛生責任者」「逸脱行為」など、日常会話では登場しない日本語が頻出します。
試験対策のためには、次のような支援が有効です。
- 過去問題を使った語彙・読解対策
- 日本語の選択肢や設問形式に慣れる訓練
- 日本語能力試験(JLPT)との併用学習
このように、語彙力・読解力・理解力の強化を図ることで、外国人施工管理者の資格取得を後押しできます。
おすすめ教材紹介(実務・資格・語彙)
日本語教育には、信頼できる教材の活用が欠かせません。以下に、現場で役立つ実践的な教材をご紹介します。
■ 厚生労働省「建設現場共通教材(外国人向け)」
- 内容:安全衛生や基本動作を、やさしい日本語とイラスト、動画で学べる
- 対応言語:日本語、英語、ベトナム語、インドネシア語など11言語
- URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10973.html
この教材は、すでに多くの企業や団体で導入されており、外国人にわかりやすく作られている点が高く評価されています。
豊富な実績とノウハウを持つ日本語オンラインスクールのご紹介
私たち日本語オンラインスクールでは、これまでに多数の外国人の施工管理者向けの日本語オンライン研修実績を持ち、企業様ごとのニーズに合わせた柔軟な研修カリキュラムをご提供しています。
また弊社の日本語講師はすべてビジネス経験を持つ日本語教育のプロフェッショナルになります。初級から中上級までの日本語力に対応し、ビジネスマナーを含めた実践的な研修が可能です。
まとめ
当スクールの研修はすべてオンラインで提供しており、国内はもちろんのこと世界中どこからでも受講が可能です。また、受講者が安心して学習を進められるよう、専任の講師による個別サポートや、学習進捗の管理、定期的なフィードバックなど、充実したサポート体制を整えています。
カスタマイズレッスンではケーススタディやロールプレイを取り入れた実践型の研修では、実際のビジネスシーンを想定しながら学習することができます。これにより、学んだ知識を即座に実践に活かすことが可能になります。
もし研修導入にご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひ気軽にご相談をいただけますと幸いです。