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インド人ITエンジニア社員向け日本語ビジネス研修ー基礎
2025年5月27日 公開
日本のIT業界は、少子高齢化による労働人口の減少と、IT技術の急速な進化による新たなスキルへの需要拡大という二重の課題に直面しています。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で79万人ものIT人材が不足すると予測されており、このギャップを埋めるため、日本企業は海外からの優秀な人材確保に目を向けています。
特に、高度なITスキルと英語力を兼ね備えるインド人ITエンジニアは、その筆頭として注目を集めています。また、IT大国として世界を牽引するインドでは、日本での就職を見据えた留学や、日本企業への就職を希望するITエンジニアが年々増加しています。日本国内のIT企業も、この状況を背景に優秀なインド人ITエンジニア人材への注目を強め、採用を強化する動きが顕著になっています。
(参考)日経新聞:楽天にはインド人が数千人 理系の頭脳を戦力に
しかし、インドと日本における言語や文化、ビジネス慣習の違いから、仕事の現場でのコミュニケーションに課題を抱えてしまい、短期間で離職をするケースも少なくないようです。本記事では、特に日本で就労するインド人エンジニア向けの日本語ビジネス研修の導入にあたり、前提として理解しておくべき基礎知識についての紹介と、日本語研修例についても紹介をしていきます。
インドと日本のビジネス習慣・マインドセットの違いを理解することの重要性
インドと日本では、ビジネスにおける文化や考え方に大きな違いがあります。 日本語を学ぶことと並行して、日本のビジネス習慣やマインドセットを理解することも非常に大切です。例えば、日本では「報連相(報告・連絡・相談)」が非常に重視され、状況の変化や問題点は小さなことでも早期に共有することが求められます。一方、インドでは個人の裁量や即時の意思決定が重視される傾向があり、問題が顕在化してから報告する傾向があります。
また、日本独特の「察する」文化や、チームワークを重んじる姿勢、会議での立ち居振る舞い、名刺交換の作法など、多岐にわたる習慣の違いがあります。これらの違いを理解し、適切に対応できなければ、意図せずして相手に不快感を与えたり、ビジネスチャンスを逃したりする可能性も出てきます。
インド人エンジニアが日本で直面する「コミュニケーションの壁」
日本のビジネスシーンでは、相手への敬意を示す敬語(尊敬語、謙譲語、丁寧語)の適切な使用が非常に重要です。インドでは上下関係が明確な一方で、日本とは異なる敬意の表現があるため、使い分けに苦労するインド人学習者も少なくありません。
また、日本では、言葉の裏にある意図や、その場の「空気」を察することが求められる場面が多々あります。直接的な表現を避ける傾向や、暗黙の了解が存在することも理解が必要です。
他にも日本の企業文化は、個人よりも組織やチームとしての調和を重視します。個人の意見を主張するよりも、チーム全体の合意形成を重んじる姿勢が求められることがあります。一方でインドでは個人主義的な傾向が強く、比較的はっきりと「No」と言う文化傾向にあります。交渉に関しては積極的で粘り強い交渉が一般的で、直接的な表現を好むことがインドと日本の大きな相違点であり、それがコミュニケーション時の壁となることがあります。
インド人ITエンジニアへの最適な日本語研修プログラムとは
前述でインド人と日本人のビジネス習慣とマインドセットの違いについて述べてきましたがそれを踏まえた上で、インド人ITエンジニアが日本の職場で最良のパフォーマンスを発揮し、長期的に活躍してもらうための日本語研修の一例を紹介していきます。
まず研修の前提として大事なことは、単に日常会話レベルの日本語を学ぶだけでは不十分です。日本のIT企業の現場で「本当に使える」日本語と、日本のビジネス文化を深く理解し、適応するための知識を網羅した研修が求められます。
特にインド人ITエンジニアを対象に重点的におこなうべき実際の研修の例を3パターンほど紹介をさせていただきます。
【1】社内コミュニケーションにおける基礎的な日本語トレーニング
- 同僚や上司との日常的な会話、休憩時間での雑談を通じて信頼関係を築くための表現
- チーム内での情報共有や連携をスムーズにするためのチャットやメールの書き方
- 「報連相(報告・連絡・相談)」の徹底:進捗報告、課題や問題点の早期共有、上司への効果的な相談方法などを具体的な事例で学ぶ
【2】会議におけるビジネス日本語トレーニング
- 自身の意見を明確に伝え、相手の意見を正確に理解するための表現(例:「~について伺ってもよろしいでしょうか?」「私の理解が正しければ、?ということですね。」)
- 複雑な技術的課題を分かりやすく説明するロジカルな話し方
- 議論を円滑に進めるためのフレーズ(例:「結論から申し上げますと?」「次の議題に移りましょうか」)
- 議事録の確認、曖昧な指示の確認方法など、実践的なシチュエーションでのロールプレイング
【3】顧客・ベンダーとの対外コミュニケーションの日本語トレーニング
- 顧客からの問い合わせへの対応、トラブル発生時のお詫びと説明
- プレゼンテーションや商談での、専門用語を交えながらも分かりやすく伝える日本語
- ビジネスメールの定型文や、丁寧な言葉遣い これらの学習を通じて、技術力だけでなく、日本語でのコミュニケーション能力を向上させ、プロジェクトの生産性を高めることに貢献します。
上記は一例になります。弊社ではIT業務に特化した日本語学習カリキュラムを多数ご用意させていただいております。詳細は当サイトのカリキュラム概要:しごとの日本語 IT業務編をご確認ください。
目標とする日本語力
外国人エンジニアを採用する際、日本語能力の目標設定は企業にとって重要なポイントです。一般的に、日本語能力の評価には日本語能力試験(JLPT)やBJTビジネス日本語能力テストが利用されますが、これらの試験は主に「会話以外」の能力を測るため、N1やN2の資格を持つ外国人でも実際の会話がスムーズに行えないケースは多くあります。
また、N2を取得してから時間が経過している場合、実際の会話レベルはN2よりも低いN3レベルに相当することが多く、日本人社員のサポートがなければ、客先でのコミュニケーションが難しい場合もあります。
このような背景から、弊社が運営する日本語オンラインスクールでは「会話力」に焦点を当てた独自の「10段階の会話レベル」を設定し、会話力を客観的に評価しています。例えば、大手SIer企業では、採用時の日本語会話レベルとしてレベル8以上を求めることが多い一方で、中小のSIer企業ではレベル5~7を目安とすることが多く、実際に採用してからコミュニケーションの課題が生じることがあります。
重要なのは、該当社員が現在どの会話レベルにあり、どのレベルを目指すべきかについて、社内や現場の上司と共通の認識を持つことです。目標設定は企業によって異なりますが、多くの場合、最終目標として会話レベル7、8(JLPT N2レベル相当)を設定するケースが多いです。
参考までに、弊社が運営する日本語オンラインスクールでレッスンを行っている生徒さんの会話レベルが実際にわかる動画をここに掲載しておきます。この動画が「どのレベルの日本語レベルを目標とするか」を決定する際の目安になれば幸いです。
インド人ITエンジニア研修に特化した日本語オンラインスクールの強み
豊富な実績とニーズに応える柔軟なカリキュラム設計
当スクールでは、これまで多くのインド人ITエンジニアをはじめ、多くの外国人エンジニアに対してビジネス日本語研修を提供してきました。その実績や培ってきたノウハウを活かし、受講者一人ひとりのニーズやレベルに合わせた柔軟なカリキュラム設計のご提案が可能です。初級者から上級者まで、それぞれの目標に応じた指導を行い、実践的なビジネス日本語スキルの習得をサポートします。
事例1:大手ITコンサル企業、80名の外国人従業員向けオンライン日本語研修導入事例
大手外資系ITコンサルティング企業が、外国人材の日本語力不足による業務効率低下やコミュニケーション課題を解決するため、インド人を中心とした80名の外国人社員を対象とした8ヶ月間のオンライン日本語研修を導入しました。
この研修では、日本語レベルに応じたマンツーマンレッスンを中心に、「みんなの日本語」やビジネス日本語のテキストを使用。日本人社員とのコミュニケーション改善、業務効率の向上、そして社員のモチベーションアップを目的としていました。
研修の運用は、受講者の選抜からレベルチェック、週ごとの宿題と進捗管理、そして出席率90%以上を必須とする修了要件とペナルティ(自己負担金、翌年の語学トレーニング対象外)を明確にすることで、高い学習効果を目指しています。この取り組みは、単なる語学力向上に留まらず、チームの生産性向上や社員のキャリア成長に繋がる重要な投資と位置付けられて導入をいただきました。事例の詳細は以下のよりご確認いただけます。
オンラインでどこからでも受講可能、安心のサポート体制
当スクールの研修はすべてオンラインで提供しており、インド国内はもちろん、世界中どこからでも受講が可能です。また、受講者が安心して学習を進められるよう、専任の講師による個別サポートや、学習進捗の管理、定期的なフィードバックなど、充実したサポート体制を整えています。
カスタマイズレッスンではケーススタディやロールプレイを取り入れた実践型の研修では、実際のビジネスシーンを想定しながら学習することができます。これにより、学んだ知識を即座に実践に活かすことが可能になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。当記事ではインド人ITエンジニア向けの日本語ビジネス研修の基礎について紹介していきました。弊社ではインド向けのビジネス日本語研修の事例が多数ございますので、もし導入にご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひ気軽にご相談をいただけますと幸いです。