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【2025年12月導入】JLPTにおけるCEFRレベル参考表示―企業が押さえるべきポイントを解説
2025年5月8日 公開
近年、日本企業は少子高齢化に伴い、様々な業界業種で人手不足に直面しており、その解消策として外国人材の採用を積極的に進める動きが高まっています。とりわけ、製造業や介護業界などでは、特定技能制度による受け入れのさらなる加速化と2027年から施行予定の「育成就労」在留資格による人材活用が注目されています。
こうした背景を受け、2025年12月から日本語能力試験(JLPT)にも、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を参照したレベル表示が導入される予定です。本記事では、JLPTおよびCEFRの概要と相関関係を整理するとともに、企業がCEFRについて理解すべきポイントを解説していきます。
JLPT(日本語能力試験)について
まず、CEFRについて説明する前に、日本語能力試験(以降JLPT)について簡単に解説をさせていただきます。JLPTは1984年に始まった日本語能力判定の公的試験で、現在は最上級のN1から入門級のN5まで5段階で構成されています。受験者数は年々増加しており、近年では70万人を超える規模にまで広まっています。日本国内だけでなく、海外約90ヵ国・地域で実施され、多くの外国人が日本語力を証明する手段として活用しています。
参考までにN5からN1までの概ねの目安となる日本語能力レベルになります。
N5:基本的な語彙や文法を理解し、簡単な日常会話ができるレベル。
N4:より多くの基本的な語彙や文法を理解し、やや複雑な日常会話ができるレベル。簡単な文章の読み書きが可能。
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解し、自然な会話ができるレベル。幅広い話題にも概ね対応が可能。
N2:幅広い場面で使われる日本語を理解し、より複雑な会話や文章に対応できるレベル。専門的な内容も概ね理解ができる
N1:高度な日本語能力を持ち、社会生活や学術的な場面で必要な日本語を理解し、使いこなせるレベルです。自然で流暢なコミュニケーションが概ね可能。
CEFR(セファール)および日本語教育参照枠(JF)概要
CEFRは、ヨーロッパ言語共通参照枠として、言語能力をA1~C2の6段階で評価する国際基準です。A1が最も易しく、C2が最も難易度の高い運用能力を示します。日本語教育参照枠(JF日本語教育スタンダード)は、CEFRを日本語教育向けに再構築し、Can-Doリストによって各レベルの到達目標を明確化しています。
[CEFRレベル目安]
A1:ごく限られた表現による自己紹介や会話が可能
A2:慣れた分野の会話であれば意思疎通が可能
B1:日常的かつ少し複雑な場面でも概ね会話が可能
B2:専門的な内容を含む会話でも概ね理解・会話が可能
C1:様々な広範な話題でも柔軟に会話が可能
C2:ネイティブ(母語話者)と遜色ない流暢さと正確さで会話が可能
特定技能制度と育成就労制度における日本語要件
特定技能制度
2019年に始動した特定技能制度では、介護や建設、製造業など14分野で外国人材を受け入れる枠組みです。要件として、例えば介護分野では「日本語能力試験N4レベル相当(CEFR A2相当)」以上が求められるなど、業種ごとにCEFRのA1/A2相当の基準が設定されています。
育成就労制度(2027年施行予定)
2027年以降に導入予定の新在留資格「育成就労」は、特定技能に先んじて日本語学習を支援しながら就労を認める仕組みです。受け入れ企業は、入国時点で「CEFR A1相当(日本語能力試験N5レベル相当)」以上を有する人材を採用し、社内研修によってA2以上へ育成することが期待されます。
JLPTのCEFRレベル参考表示とは何か
2025年12月から、JLPT公式ウェブサイトや合否通知書にCEFRレベルの目安が併記されます。具体的には以下の対応表が予定されています。
※あくまで「目安」であり、個々のCan-Do項目とは完全一致しません。合否通知に併記されるレベルは、企業が社内の日本語基準とすり合わせる際の指標として活用できます。
JLPT と CEFR の相関関係(企業視点)
CEFRについて企業側で理解すべき3つのポイント
1.日本語要件設定の精度向上
CEFR表示が加わることで、JLPTの"級"だけではわかりづらかった語学運用範囲を可視化できます。これにより、社内の採用基準や研修カリキュラムをCEFRレベルで統一でき、要件の曖昧さを解消します。
2.採用要件とのすり合わせ
履歴書や職務経歴書に「JLPT N3(CEFR A2相当)」などと併記してもらうことで、書類選考時の合否判断がスムーズに。また、面接時に「Can-Doベース」でのコミュニケーション能力を確認しやすくなります。
3.研修・教育プログラムへの活用
CEFRのCan-Doリストを参考に、レベル別の研修プログラムを設計できます。たとえば、A1レベル向けには簡単な自己紹介練習や指示理解演習を中心に、A2以降は業務マニュアル読解やロールプレイを取り入れるなど段階的なカリキュラムが可能です。
導入シミュレーション例
製造業A社(特定技能)での導入目標
A社では、介護用機器の組立セクションに特定技能人材を雇用。導入前は「N3以上」を日本語要件としていたが、CEFR表示導入後は「A2相当(N4・N3の中間程度)」を明示をする。書類選考の段階から必要レベルの応募者を絞り込み、面接ではCan-Doリストに沿った日本語チェックシートを活用。内定後は社内研修で「部品名称の読み書き」「簡単な作業指示理解」を重点的に強化し、配属初月での戦力化につなげていく。
介護職B社(育成就労)での導入目標
B社は2027年以降、育成就労制度を活用予定。入国時には「JLPT N5(CEFR A1相当)」以上を要件とし、到着後3ヵ月でA2相当程度まで引き上げるプログラムを構築。具体的には、週3回の日本語レッスン(Can-Doベース)、職場OJT(会話フレーズ習得)、eラーニング教材による自主学習を組み合わせ、入社半年以内に利用者との基礎的なコミュニケーションを実現。これにより、採用後のミスマッチを減少させていく。
まとめ
2025年12月から導入されるJLPTのCEFRレベル参考表示は、企業が外国人材の日本語要件を設定・運用する上で画期的なツールとなります。CEFR表示により、採用基準の明確化、面接・研修時の評価基準統一、レベル別研修カリキュラム構築が可能となり、外国人材の早期戦力化と定着率向上に寄与します。今後は、各社が自社の業務実態に合わせ「CEFR×JLPT」を上手く活用することで重要になっていきます。
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